東南アジアのナムアミ王国はコーヒーの産地として知られています。ミンさんの家もコーヒー農家です。湖の脇の斜面沿いに広がる土地が彼の農園です。

「このあたりは昔はジャングルでしたが、徐々に焼き払って農園を拡大して来ました。コーヒーの値段は下がる一方で、家族の生活を支える為には、たくさん作るしかありません。今では3人の子供たちも一緒に作業をしています。歳ですか?上から12、10、9です。学校は行っていません。20キロ先まで行かないとありませんし。」

「いやー、生活は大変ですよ。なんせ土地が痩せていますので、たくさんコーヒーを作るためには、たくさん化学肥料を買わねばなりません。それに病気や害虫の心配もありますから、農薬も必要です。これも市場で買うんですが、とてもお金がかかります。とても我が家にはそんなお金は無いので、遠い親戚の叔父さんに借りているのですが、借金は増えるばかりで、いつ返せるのか見当もつきませんよ。」

「有機栽培?そういえばね、その昔、国際NGOドリーム4Uというのが村に来て、有機栽培のコーヒーを作れっていうからみんなで作ったけど、手間ばかりかかって収穫量も少なくてね。それでもって結局は仲買人に他のコーヒーと一緒の値段で買っていかれるんだから、まったく割に合わない話でしたよ。そのNGOは途中でいなくなってしまったし。」

それから5年後。ミンさんたちの村には劇的変化がありました。下がりつづけるコーヒーの値段を何とかしようと、コーヒー農家組合が組織されました。団結して仲買人と交渉するようになって少しは改善されましたが、世界的な価格下落傾向はどうすることも出来ませんでした。

そこへ組長がどこからかフェアトレードの話を仕入れてきました。町へ代表者を送ってフェアトレードの団体を探しました。運良く3年前からナムアミ・コーヒーを扱っている日本のフェアトレード団体ナムアミ・フェア珈琲の事務所を探し当てることが出来ました。ナムアミ・フェア珈琲の人に村へ説明に来てもらって、コーヒー農家組合はフェアトレードに参加することに決定しました。

ナムアミ・フェア珈琲は、珈琲の国際価格が1キロ300円以上の時はいくら高くても国際価格で買取り、国際価格が1キロ300円未満の時は国際価格がどんなに安くても1キロ300円は保証してくれるので農家は安心です。また、長期間に渡って最低限の買取り量も保証してくれるので、長期的視野にたって計画的に生産できます。さらにコーヒーの木の植え替えなどでお金が必要な時は、格安の金利で貸してもらう事も出来ます。農家にとっては夢のような話しばかりです。

ナムアミ・フェア珈琲からの要求は、化学肥料、農薬の使用を止めて有機栽培をすることでした。 そのために必要な自然の力を利用した病害虫のコントロール方法や、効率の良い有機肥料の作り方などは、既に取引のある、有機栽培で実績のある村から指導者を呼んでもらいました。

さらにナムアミ・フェア珈琲はコーヒーの木の間に背の高い木を植えることを要求しました。こうすることによってコーヒーの木が日陰に隠れ、驚くようなまろやかな風味を持ったコーヒーが出来るのです。こうして出来た日陰栽培のコーヒーはツウの間で大変評価が高まっています。それに背の高い木を植えることによって、雨粒が地面に着地する前に一度葉に当たり衝撃を和らげることが出来るので、土壌流出が軽減できるのです。また、落ちた木の葉はコーヒーの肥料になります。

こうしてミンさんの農園でも木を植え、有機栽培を実行しました。斜面の多いミンさんの農園では、木を植えることは土砂崩れ防止にも一役買っています。たくさんの木が植えられ、有機栽培によってコーヒーの木もより元気になり、村の自然環境はずいぶん改善されました。そして収穫量は減ったものの、コーヒーの売上は格段に多くなりました。おじさんからの借金もだいぶ返済することが出来ましたし、時間も金銭的余裕も出来たので子供たちは学校の寄宿舎に入ることが出来ました。ミンさんはこのままいつまでも日本の人が有機栽培のおいしいフェアトレードコーヒーを飲んでくれることを願っています。

おわり

この物語はフィクションであり、実在する地名・人物とは一切関係がありません

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